フィリピン:捨てるところのないココナッツ資源(飯山賢治)

サン・パブロ市郊外のココヤシ園

 ココヤシの樹を見ると、南国に来たなと思われるのではないでしょうか?ココヤシが自生する北限地は沖縄県の西表島と言われています。2017年、世界のココナッツ生産量は6,100万㌧で、国別ではインドネシアが最も多く1,900万㌧、次いでフィリピンが1,400万㌧となっています。フィリピンのココナッツ栽培面積は360万haで、国土面積3,000万haの実に12%がココナッツ樹で覆われていることになります。たしかに麓から山頂までココナッツ樹で覆われている山もまれではありません。

ココナッツ果実の構造

 ココナッツを生産する目的は、胚乳にあるココナッツ油を得ることです。フィリピンのココナッツ油の生産量は110万㌧で世界一です。ココナッツ油はパーム油に似て「中鎖」の飽和脂肪酸に富むので酸化しづらく、熱に強いという性質があり、マーガリン製造や潤滑油など工業油として使われています。しかし、パーム油(輸入原価79円/kg)に比べ高価(同160円/kg)となっています。若いココナッツの実では胚乳の内側に糖類、タンパク質、カリウムほか種々の必須金属を含む水がはいっていますが、そのまま飲用に供されるだけでなく、菌類の培養の培地としてなくてはならないものとなっています。

ココヤシ園でのヤシ殻の製炭

 胚乳は非常に硬い殻に包まれています。殻は現地でドラム缶を使った簡易な方法で炭にして、日本などに輸出します。炭の一部は水蒸気などで処理することで付加価値を高めた活性炭として輸出します。日本はフィリピンからヤシ殻炭を25,000㌧(90円/kg)、活性炭を9,000㌧(220円/kg)輸入しています。

 殻の外部には繊維状のコアイアがあります。これを櫛状の刃を持つ機械で精製して、ベッドの中芯や玄関マット、俵等々様々な製品にして輸出しています。コアイアの精製の際に粉状のもの(コアイアダストと呼んでいます)が出てきます。これは保水性が高いので圧縮してレンガ状にして、「有機土壌」と称して世にだしています。

繊維状のコアイアからの種々の製品