「非木材グリーンマーク」の新たな運用について

添田馨(非木材グリーン協会会長・専務理事)

「非木材グリーンマーク」は、前身の「非木材紙マーク」の発足から数えると今年で32周年を迎えます。その間、地球環境をめぐる現実は緩和するどころか、より一層厳しさを増しているのが現状です。それに伴って、世界のさまざまな環境思想や環境基準も大幅な変化を遂げてまいりました。

「非木材グリーンマーク」は、そうした中にあって、「非木材パルプ(植物繊維)を重量比で10%以上使用」の紙製品や加工品という審査基準を設け、現在もその原則についてなんら変更はありません。

ただし、その一方で、国内外の認証スキームの変化や対象となる物品の多様化などに伴ない、それぞれの製品の性質・特性によっては「特例」を設けて対応することも行ってまいりました。その一環として、2024年7月の理事会において、「特例:ミックス」という新たな認証スキームの導入が検討されました。

例えば複合的な部材から構成される製品の場合、その部材のひとつに非木材パルプ(植物繊維)が使用されていれば、その部分のみを「特例」的にマーク認証の対象にするというものです。

この考え方は、非木材パルプ(植物繊維)の使用されている製品を、ひとつでも多くご紹介できるように、マーク認定のすそ野をいまよりも拡大したいという私たちの思いに根ざしています。

「特例:ミックス」の一例として、ここでは表裏ライナー部分に非木材パルプ(植物繊維)を採用した場合の「ハニカムボード」(写真)を取りあげさせていただきます。

「ハニカムボード」とは、中層部分に中芯ライナー原紙によるハニカム構造を装備し、それを表裏からライナー原紙によって挟み込む方式で製造された、汎用性のある高強度の紙製ボードです。

しかし「ハニカムボード」全体の重量構成比では段ボール古紙が100%を占めるハニカム構造(コア部分)が全体の75%近くを占め、非木材パルプが配合可能な表裏ライナー部分は25%程度を占めるに過ぎません。

現行の非木材グリーンマークの認証基準は、全体重量の10%以上を非木材繊維が占めることとなっており、その基準を「ハニカムボード」にそのまま適用すると、表裏ライナーの部分に非木材パルプを過剰に導入しなくてはならず、資源効率の面からも有効ではありません。従って、表裏ライナー部分のみを「特例:ミックス」として認証するのが、このような場合、有効かつ合理的であると判断されました。

現行の「FSC森林認証」制度には「FSCミックス紙」というカテゴリーがあります。この「ハニカムボード」の場合だと、中段のコア部分に「FSCが認めている適格な原材料」としての「回収された古段ボール」をほぼ100%使用しているため、FSCのミックス認証の基準はすでにクリアしています。しかしながら「非木質植物繊維」は「森林外に由来する原材料」であるところの「中立原材料」という扱いになるため、非木材パルプの配合部分についてFSCの認証規定は適用されません。(「中立原材料」については以下(注)を参照)

(注:下線は引用者による)

Neutral material: Material that comes from outside a forest matrix (i.e. non-forest based material). Examples are non-wood plant fibres or lignified materials (e.g. flax used in the manufacture of a board classified as a wood-based panel or of a composite product) and synthesized or inorganic materials (e.g. glass, metal, plastics, fillers, brighteners). Neutral materials do not include non-timber forest products and salvaged wood. Neutral materials used in FSC product groups are exempt from CoC control requirements. Once a non-forest-based material has been included in the scope of an FSC certificate, FSC will determine and communicate when it can no longer be classified as neutral material.

中立原材料:森林外に由来する原材料(非森林由来の原材料)。例として非木質植物繊維または木化素材(例:木質パネルに分類される板または複合製品の製造に使用される亜麻)や合成物質もしくは無機物質(ガラス、金属、プラスチック、充填剤、光沢剤など)がある。中立原材料には非木材林産物あるいは未使用回収木材は含まれない。FSC製品グループに使用される中立原材料はCoC要求事項を免除される。FSC 認証制度において特定の非森林由来の原材料を考慮するような制度変がされる際には、いつからその原材料が中立原材料と分類されなくなるのか、FSC はその時期を決定し、発表する。

(引用元:Chain of Custody Certification CoC認証/FSC-STD-40-004-V3-1)

「特例:ミックス」認証は、このように、製品に占める「FSCが認めている適格な原材料」(回収された古段ボール)部分の重量をノーカウントとし、CoC認証の要求事項の対象からはずされた「非木材パルプ」の配合部分だけを特定して重量評価をおこない、「非木材グリーンマーク」の認証対象にするという新たなスキームです。

「特例:ミックス」の運用にあたっては、消費者の疑念や誤解を招かないよう、マーク表示のさいに付帯文言(例:この製品の表裏には非木材パルプが10%以上使われています)等の表示を義務付けるなどの工夫を凝らすものとします。