タイ:サトウキビバガスの利用への挑戦

ナコンサワン郊外のサトウキビ農園

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ナコンサワンパルプ工場へのバガス供給
サトウキビ(Saccharum officinarum)はトウモロコシなどと同じで、光がない夜間でも炭水化物を生合成できるC4型植物です。したがって生合成効率は極めて高くなります。国連の食料農業機構(FAO)の統計データ(FAOSTAT)によると2017年の世界のサトウキビの生産量は18億4,000万㌧に達し、タイのサトウキビ生産量は世界4位で約1億㌧になります。

ナコンサワンパルプ工場へのバガス供給

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ナコンサワンのバガスパルプ工場
サトウキビの生重量に対する砂糖成分(シュクロース)の含有量は13~14%ですから、サトウキビ1㌧から砂糖0.13~0.14㌧が得られる計算になります。サトウキビを機械的に絞ることで砂糖を含む液を得ることができ、精製することで粗糖が得られます。18億4,000万㌧からは2.4~2.6億㌧の砂糖が得られるはずです。しかし世界の実際の砂糖生産量は1.77億㌧(70%)、タイでは1,350万㌧(74%)となっています。

ナコンサワンのバガスパルプ工場

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バガスパルプから種々のモールド容器
砂糖を搾汁した残渣がバガスですが、原料であるサトウキビの約25%がバガスとして得られます。その含水率は約45%ですから、世界全体のバガスの乾燥重量は2億5,000万㌧で、タイでは1,400万㌧にもなります。バガスの成分は、セルロースが42%であり、ヘミセルロースが25%、リグニン20%です。広葉樹の木材の成分とほぼ同じです。しかも搾汁操作で細かく繊維化されています。これを有効に使わない手はありません。

バガスをソーダアントラキノン法条解で脱リグニンして、過酸化水素でかるく漂白します。こうして得られたパルプから、上質の印刷筆記用紙ができますし、パルプを型に入れプレスすれば種々の容器を製造できますし、すでに市販されています。

さらに脱リグニンしたパルプを酸加水分解又は酵素分解して単糖にしてから酵母で発酵することでバイオエタノールを製造できます。理論的エタノール収率は3,600kg/haと推定している報告も見られます。(飯山賢治)