【論文紹介】ミスカンサスは「2050年までに炭素排出量ゼロ」に役立つ?

 ミスカンサスは秋の七草を代表する植物で、垂れたその穂が名月に映えるススキ(Miscanthus sinensis)のことです。かつては「茅」と呼ばれ、人の背の高さで「茅葺き屋根」の材料として、また民芸品などに加工されています。ススキは光合成能が高いC4植物で、それ自体、エネルギー作物とも言えますが、以下の論文でミスカンサスと言っているのとはちょっと違っています。いわゆるススキと呼んでいるM. sinensis(染色体数2n=38)と四倍体のオギ(M. sacchariflorus)(2n=76)との自然交雑した三倍体雑種のジャイアント・ミスカンサス(M. x giganteus)です。ススキとオギでは種が違いますので、「交配」体ではなく「交雑」体になります。三倍体ですから「花」と「花粉」と言った普通の方法では増やすことはできません。地下茎で増えていきます。
 比較的寒冷な北海道・札幌で育てたもので、乾物生産量は25.6 ±0.2㌧・ha-1・年-1と高く、土壌炭素貯留量も1.96 ± 0.82 ㌧・ha-1・年-1 であり、森林での値より高く、有望な資源作物です。なお、温暖な地域で高い乾物重量を与える多年生イネ科植物として注目を集めているのが、Erianthus ravennaeE. arundinaceusのエリアンサスです。これは言うまでもなくススキ科ではありません。さらに南の熱帯地方では、アフリカ原生と言われる多年生イネ科植物エレファント・グラスと呼ばれているネピアグラス(Pennisetum purpureum)があります。生育環境に適した「エネルギー作物」の活用を考える必要があります。

Sa, M., Zhang, B., and Zhu, S. (2021). “Miscanthus: Beyond its use as an energy crop,” BioResources 16(1), 5-8.

(飯山賢治)