【寄稿】SDGsと国際認証(佐藤雅俊)

 「持続可能な開発目標(SDGs)」の課題解決に向けた提案等は、今や企業にとって大きなビジネスチャンスになっていますが、SDGs関連の国際市場へアクセスするためには、まず目標に関連した製品等の認証に基づいた差別化が必要になります。そこで、SDGsに取り組む企業は、それぞれの分野でSDGsに関連する国際認証を取得することによって、課題解決に貢献していることを消費者や投資家等に示し、信頼を獲得しているのが現状です。

 では、国際認証はどのような制度で、誰が認証を行うかということですが。世界には、業界・団体や各企業で定めた各種の認証制度があります。その中でも、信頼度が高いのは国際的な第三者機関による国際認証で、国際NGO・NPO等が基準を定め、基準を満たしているかどうかを客観的に審査し、合格すれば国際認証を付与することが出来る制度です。認証プロセスは一度で終わるのではなく、通常は基準を満たした状態が保たれているかどうか定期的に監査が行われます。監査では、それぞれの事業者組織が国際認証基準を遵守した行為を行っているかをチェックし、遵守していないと判断された場合には、一定期間内で改善することが求められ、それでも改善されない場合には、認証の一時停止や取消処置が行われます。また、認証が付与された場合には、企業が製品やサービスを提供する際に、製品自体、製造、運搬等の各過程に関して、品質や過程に問題がなく行われていることを保証する「認証ロゴ」を製品等に添付し、消費者・投資家等にアピールすることができます。このような認証を取得することによって、国際市場におけるESG投資の際の重要な評価項目の一つになり、ビジネスチャンスが生まれる可能性がより高くなります。

 なお、国際認証を行う第三者機関の要件ですが、国際認定機関(国際認定サービスASI:Accreditation Services International)により認定されなければ、上述した審査等を含む一連の行為を行うことができません。

 国際認証制度とSDGsとの関係を見ると、SDGsの17個の目標の中には、いくつか企業の活動と関連の深いものがあります。例えば、目標8「働きがいも、経済成長も」では、持続可能な経済成長を下支えする働きがいのある人間らしい仕事を推進する、「国際フェアトレード認証」があり、目標14「海の豊かさを守ろう」と目標15「陸の豊かさを守ろう」では、それぞれ持続的な水資源管理に関連して「MSC認証」、森林の管理に関連して「FSC認証」や「RA認証」などがあります。

 以下に、目標8と目標15にそれぞれ関連する国際認証について概説します。

1.目標8:働きがいも、経済成長も(質の高い仕事を保証する)

 目標8に関連の深い国際認証は、「国際フェアトレード認証」です。目標8は包摂的で持続可能な経済成長を遂げるために、人々に雇用機会と良い雇用環境を提供することが目標で、危険・劣悪な環境での労働、適切な賃金が得られない場合等は、質の良い雇用環境とは言えず対象外となります。例えば、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、開発途上国の生産者や労働者の生活改善や自立を支援する貿易システムがそれに当たります。特に、コーヒー、茶、チョコレート(カカオ)、バナナなど途上国原料調達製造が必要となる製品が対象で、認証は、原料の生産、輸出入、加工、製造工程を経て完成品に至るまでの各工程で、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)の基準を満たしていることが証明された場合に、フェアトレード認証製品の認証ロゴを使用することができます。

2.目標15:陸の豊かさを守ろう(森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止・逆転、生物多様性損失の阻止を図る)

 目標15に関連が深い国際認証は、「FSC認証(森林管理協議会 :Forest Stewardship Council)」です。FSC認証は、環境、社会、経済の便益にかない、適切に管理された森林からの製品を目に見える形で消費者に届け、それにより生産者に経済的利益を還元する仕組みで、適切な森林の管理体制を示した組織に対して付与されます。また、FSC認証と同様の認証に、「レインフォレスト・アライアンス認証(RA:Rainforest Alliance)」があります。この認証は、特に熱帯雨林の持続可能な管理を保証するもので、経済的、社会的、環境的な原則は、フェアトレード認証の基準と酷似しています。

 以上のように、SDGsと国際認証との関係は、日本企業がSDGs関連市場でビジネスチャンスを見いだすための第一歩になるようです。しかし、今後は、ビジネス機会を広げるために、我が国の提案による課題解決に向けた新たな国際標準化への取組みが必要のようです。

 一方、本協会の業務である非木材バイオマスを原料としたパルプ・紙製品の普及促進のための「非木材グリーンマーク」の認証は、NPOによる審査になりますが、今後は国際認証制度との関連付けが出来るような情報発信等を行い、非木材バイオマスのさらなる技術開発、経済、環境等への配慮など、SDGsに関連する課題解決のための一助となるような認証を目指し、活動して参りたいと思っています。

(佐藤雅俊)