魅惑の熱帯果実6:タマリンドとサラック

 「世界三大スープ」って何だかご存知ですか?一般的には、フランスのブイヤベース、タイのトムヤムクン、中国のフカヒレスープのことを指します。この中で、タイの首都バンコクの中心街から北東 15km にあるカセサート大学近くの閑静な住宅地のなかにあるテラス式の小さなレストランで食べたトムヤムクンは実に美味しく今でも覚えています。

タマリンドの樹

 トムヤムクンは酸味と甘みと辛みの絶妙な絡み合いがミソですが、酸味はお酢とは一味違った未成熟のタマリンド(Tamarind:  学名:Tamarindus  indica)の果肉中の酒石酸 (HOOC-CH(OH)-CH(OH)-COOH) とクエン酸 (HOOC-CH2-C(OH)(COOH)-CH2-COOH) によります。これらの酸味は非常に強くとてもそのままでは口にすることができませんが、完熟したタマリンドの果肉はペースト状の暗褐色で、濃厚な干しブドウや干しナツメヤシ(デーツ)のような甘みにわずかに酸味が残る美味しい果実になります。

完熟したタマリンドの果実

 タマリンドはマメ科・タマリン属の高木ですが、その生産量についての公表情報はほとんどありません。インドではタマリンドはカレーに欠かせない調味料の一つです。そのこともあってインドは最大の生産国で、27 万 5,500 ㌧生産されています。ASEAN 諸国の中で最大の生産国はタイですが、その生産量は見当たりません。しかし、タイの輸出品の一つになっているのは確かです。また残念ながら日本の輸入状況も見つかりません。

棘のあるヤシの根元に群生するサラックの果実

 日本ではほとんど見かけない熱帯果実にサラックを挙げることができます。サラック(Salak: 学名 Salacca zalacca)は鋭い棘だらけの低木のヤシ科サラカヤシ属の果実でのもと近くに群生しています。原産地はインドネシアのジャワ島あるいはスマトラ島といわれています。この果物の外皮は赤褐色でヘビの鱗に似ていることから「スネークフルーツ」と呼ばれています。

ヘビの鱗のようなサラックの果実

 インドネシアのマーケットで初めてこの果実を見たとき、この外皮は手で簡単にはがすことができ,内部には白い果肉がありました。恐る恐る口にすると、淡い甘みに酸味と渋みがあり、お世辞にも美味しいとは思えませんでした。インドネシアのボゴールのマーケットでは、1kg あたり Rp 25,000(180 円)でした。財務省の貿易統計でもHS コードが振り当てられていませんので、輸入の状況も不明です。

(飯山賢治)