魅惑の熱帯果実4:パパイヤとパイナップル

パパイアの完熟果実

 今回は、多くの方がご存知の 2 つの果実を紹介しましょう。まずはパパイアです。熟していますと十分甘いですが、強いクセのある独特な甘い香りがするといわれる品種もあります。この香りを「腐った匂いがする」とパパイアを苦手とする人もいますが、実は私もそのひとりです。 レモンやライムを搾って食べると臭みが消えて食べやすくなります。

 果実で、もう一つ指摘しておきたいことがあります。「パパイン」です。ビフテキなどに生のパイナップルの輪切りが添えられていることがありますが、これはパイナップルにパパイン(papain, EC3.4.22.2)というタンパク質分解酵素が含まれているので、肉を柔らかにするからです。パパインは、実はパパイア (Carica papaya)から見つかったものです。

パパイアの樹

 ところで、パパイアは中央アメリカ原産のパパイア科パパイア属多年生植物で、背が高く、茎が太くなるので樹木と見ることができますが、茎の幹部は木質化しておらず、木ではなく草として捉えられる場合もあります。事実、幹部はスポンジ束子のようなスカスカ状です。

 2018 年にはパパイアは 1,300 万㌧生産され、その主産地はインド、ブラジル、メキシコです。収率は高く 40~50 ㌧/ha にもなります。日本では沖縄などでわずかに生産されています。2008 年ごろまではフィリピン及びハワイから 400 万㌧輸入していましたが、徐々に減少して 2016 年以降は 100 万㌧まで減っています。輸入単価は1kg あたり350~400 円ぐらいです。

パイナップルプランテーション

 パイナップル(pineapple)に移りましょう。パイナップル(Ananas comosus)は、熱帯アメリカ原産のパイナップル科の多年草の果実で、果実の形状がマツカサに似ているので名付けられたようです。2018 年には世界で 2,800 万㌧生産されています。生産量が多い国はコスタリカ、フィリピン、ブラジル、タイで、  日本も沖縄を中心に 8,700 ㌧生産しています。日本は年 16 万㌧ほどを輸入していますが、その 90%はフィリピンからで輸入単価は 90 円/kg です。

パイナップル葉から得られる繊維

 パイナップルは収穫が終わると、残渣植物はほとんど廃棄されます。しかし、葉の部分から簡単な物理的及び化学的処理で、サイザール繊維と同じような実に繊細な美しい繊維を得ることができます。今後、経済的な観点を含め、利用開発を進めるべきでしょう。

(飯山賢治)