グリーンに向けた取組:モンゴル国~広大な草原と砂漠の国

 モンゴルの人口は317万人、国土面積が156万km2(日本の4.2 倍)ですから人口密度は 2.0 人/km2(日本は335人/km2)で、世界で最も人口密度が低い国です(FAOSTAT)。国土面積のうち農耕地は0.4%にすぎず、国土の71%が自然草地です。森林は国土の8.1%で、ほぼ日本の面積に匹敵する32.3万km2 が砂漠や岩山等の荒廃地と市街地となっています。

 自然草地を使ってヒツジとヤギを併せて5,750万頭(ヒツジ:3,010万頭、ヤギ2,740万頭)、ウマが人口を上回る394万頭、ウシ440万頭が夏季には放牧されています。よくニュージーランドはヒツジの国と言われていますが、ヒツジとヤギの国民1人当たりの頭数は約6頭です。ところがモンゴルのそれは3倍の18頭にもなります。

 ウランバートルの標高は1,300m、年平均気温はちょうど0℃で年降水量は280mmです。9月初めだというのに昼間の気温は10℃ほど。夜は0℃近くにまで下がりますが、暖房はホテルもふくめて市全域の集中暖房で9月15日まで入らないとのこと。

 私たちは首都ウランバートルから南西360km離れたアルバイヘールの試験地に自動車で移動しました。道路はウランバートル近郊にしかありません。どこまでも続く起伏に富んだ自然草地に縦横無尽につけられた轍に沿って、というより新たな轍を作って8時間かけて移動しました。アルバイヘールは小中学校が1校あるだけの小さな町で、標高は1,800m。ゴビ砂漠の東北端に接しており、年降水量は210mm、年平均気温は2℃。さすがにホテルには暖房は入っていましたが、シャワーで温水が使える時間は制限されていました。しかし、ウランバートルとは違って空気は徹底的に澄んでいて、ちょうど中秋の名月に遭遇し、寒さを忘れて外に出てめでていました。

 降水量が少なく、標高が高いこともあって冬季には-20℃にもなる厳しい気候ですから、家畜の餌となる自然草原の植物の生育も極めて貧弱です。草を舌で巻き取って食するウシとは違って、根までかみ切ってしまうヒツジ、ヤギの過放牧で草原の植生は痛めつけられ、砂漠化が進行しているのを目の当たりにしました。家畜の放牧は原則1年を通してですが、気温が-20℃以下になると放牧地のあちこちに簡単な家畜の避難小屋が設けられています。しかし、何年に1回、ヒツジやヤギの大量凍死が報告されています。

(飯山賢治)